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詩と映画と日記

詩と映画と日記

ベニスの商人

『ヴェニスの商人』

原作
 
ウイリアム・シェークスピア

監督
マイケル・ラドフォード

キャスト
アル・パチーノ (シャイロック)
ジェレミー・アイアンズ (アントーニオ)
ジョセフ・ファインズ (バッサーニオ)
リン・コリンズ (ポーシャ)

シャイロック
シャイロック (アル・パチーノ)

アントニオ
アントニオ (ジェレミー・アイアンズ)

バッサーニオ
バッサーニオ (ジョセフ・ファインズ)

ポーシャ
ポーシャ (リン・コリンズ)

 

ライン

『ロミオとジュリエツト』に並び親しまれている
皆さまご存知のシェークスピアの名作ですが
英語圏では初めての映画化ということで
楽しみに待っていました

期待した以上で嬉しかったです
背景は16世紀のヴェニスです
わたしもその場に居合わせるような臨場感をおぼえ
シェークスピアを満喫する時間を味わいました

ロマンチックな恋の進展を軸として
人種問題、父娘の葛藤、宗教問題、友情、憎悪と
現代にも通じるたくさんのドラマがあり
これぞ主人公と思う人が何人も登場します

知性と財産に恵まれた美しい女相続人ポーシャ
結婚相手を募集していますが
金、銀、鉛の箱選びで夫を決めるように
亡き父の遺言に拠って定められています


求婚者のひとりに
高貴な生まれながら遊興に財産を使い果たした
ハンサムで少し軽薄なバッサーニオ
がいます
彼は求婚の費用を作るために莫大な借金をしますが
保証人には裕福な商人のアントーニオが
怖ろしい担保となっています

アントーニオは仕事に全精力を傾けて成功していますが
家族はなく若い友のバッサーニオを弟のように愛しているので
一抹の不安を覚えながらもシャイロックの罠に落ちていきます

バッサーニオが借金をしたのは
ユダヤ人であるために人々に卑しめられ
正業につくことが許されず高利貸しとして蔑まれている
シャイロックでした

シャイロックはバッサーニオにお金を貸す際
ほんの冗談だからと言いながら
好意の印に利息は取らない、その代わり
もしも期限までに返済ができない場合は
保証人の肉を1ポンド申し受けると条件をつけました
後にこれが有名な人肉裁判に発展していくのですが

シャイロックは、卑しい高利貸しだけではなく
娘を愛し裏切られる哀しい父でもあります

一神教で誇り高く優秀なユダヤ民族ですが
古くローマ時代から他民族との融合を嫌って
独自の文化と宗教を守り通してきたために
世界の中での村八分のような状況になり
お金だけが頼りとなったのでしょう
今も金融界にはユダヤ人が多いと聞きます

おとしめられ、迫害された悲しみと怒りが
シャイロックの中に蓄積して爆発します

アル・パチーノがこのユダヤの高利貸しを
憎々しいばかりではなく祖先の生き様をも見せる
ひとりの男、父として演じていますが
打ってつけの配役です

ジョセフ・ファインズのバッサーニオは
『恋に落ちたシェークスピア』で見せたより
よっぽど良い男ぶりで
才女ポーシャを射止めたのも自然に思えます
軽薄で遊び好きの貴公子が
恋と苦難を経て一人前の男に成長をするのですね

リン・コリンズのポーシャは
声を抑えたセリフに説得力があり
夫に尽くす従順な妻と男勝りの行動力を調和させた
いい女を素敵に演じています

シェークスピア俳優の
ジェレミー・アイアンズのアントーニオも
さすがでしたが、老けたのが寂しいです

決して難解ではなく
と言ってシェークスピアの雰囲気を壊すことなく
品格があり後世に残る作品だと思いました

私にとっては『オペラ座の怪人』と共に
今年最高の映画です


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